失神について
失神とは
失神とは、脳全体への血流低下により起こる一過性の意識消失で、突然発症し、短時間で自然に完全回復するのが特徴です。脳への血流が6〜8秒途絶えたり、収縮期血圧が60mmHg以下まで低下すると意識を失います。
「一過性意識障害」との違い
一過性意識障害は、秒〜分単位で持続し自然回復する意識障害の総称で、失神以外にもてんかん、脳血管障害、過換気症候群などの非失神性疾患も含まれます。失神の診断では、これらの疾患との鑑別が重要です。
失神の3つの主な分類
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分類 |
原因・機序 |
緊急度 |
予後 |
|---|---|---|---|
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🚨 心原性失神 |
不整脈、心疾患による心拍出量低下 |
最高リスク |
生命に関わる |
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⚠️ 起立性低血圧失神 |
起立時の血圧低下(起立後2分以内) |
中リスク |
原因により異なる |
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💙 神経調節性失神 |
血管迷走神経反射(起立5分以降) |
低リスク |
予後良好 |
🚨 重要:
救急外来では特に「心原性失神」のリスク評価と除外が最優先です。心原性失神は突然死につながる可能性があり、見逃してはいけません。
症状と発症状況
失神の種類別特徴
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項目 |
心原性失神 |
起立性低血圧失神 |
神経調節性失神 |
|---|---|---|---|
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発症のタイミング |
労作時・仰臥位・安静時 |
起立・座位後2分以内 |
長時間立位・特定状況 |
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前駆症状 |
なし・突然の動悸 |
めまい・ふらつき |
冷汗・顔面蒼白・嘔気 |
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意識消失時間 |
10秒以内と短い |
数秒〜分 |
数秒〜分 |
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誘因 |
運動・ストレス・心疾患 |
脱水・出血・薬剤 |
不快刺激・痛み・恐怖 |
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回復 |
速やか |
速やか |
速やか(まれに疲労感) |
危険な失神のサイン(心原性失神を疑う所見)
⚠️ 以下の所見があれば心原性失神を強く疑い、緊急評価が必要です:
発症時の状況
- 労作時や仰臥位での失神
- 突然の動悸直後の失神
- 前駆症状のない突然の意識消失(10秒以内)
- 新規発症の胸痛・呼吸困難・腹痛を伴う
- 座位での失神(心電図異常や心疾患既往がある場合)
既往歴・家族歴
- 重症な器質的心疾患(心不全、左室機能低下など)
- 冠動脈疾患(陳旧性心筋梗塞など)
- 原因不明の若年突然死の家族歴
身体所見
- 原因不明の収縮期血圧 < 90mmHg
- 未診断の収縮期雑音
- 無症候性の持続性徐脈(< 40回/分)
神経調節性失神の特徴
以下の特徴があれば神経調節性失神の可能性が高く、予後良好です:
- 過去に同様のエピソード(特に40歳まで)
- 不快な光景・音・匂い・痛みの後に発症
- 長時間の立位後に発症
- 食事中・人混み・暑い場所で発症
- 前駆症状:顔面蒼白、冷汗、嘔気
- 心疾患がない
診断方法
🔍 基本的な診断アプローチ
- 詳細な病歴聴取:発症状況、前駆症状、既往歴、家族歴、薬剤歴
- 身体診察:バイタルサイン、心音・雑音、神経学的所見
- 起立試験:臥位・立位血圧測定
- 12誘導心電図:不整脈、伝導障害の評価
- 血液検査:電解質、血糖値、ヘモグロビン
精密検査
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検査 |
適応 |
評価項目 |
|---|---|---|
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心エコー検査 |
心疾患疑い |
心機能、弁膜症、心筋症 |
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24時間心電図(ホルター) |
不整脈疑い |
一過性不整脈の検出 |
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運動負荷試験 |
労作性失神 |
運動誘発性不整脈 |
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ティルト試験 |
神経調節性失神疑い |
血管迷走神経反射の誘発 |
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電気生理学的検査 |
不整脈原因不明 |
伝導系異常・不整脈誘発 |
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植込み型ループレコーダー |
原因不明の反復性失神 |
長期心電図監視 |
治療法
💊 失神の種類別治療
🚨 心原性失神
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原因 |
治療法 |
目的 |
|---|---|---|
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徐脈性不整脈 |
ペースメーカー植込み |
徐脈の防止 |
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頻脈性不整脈 |
ICD植込み・アブレーション |
致死性不整脈の治療・予防 |
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器質的心疾患 |
心不全治療・外科治療 |
心機能改善 |
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薬剤性 |
原因薬剤の中止・調整 |
原因除去 |
⚠️ 起立性低血圧失神
- 非薬物療法:水分・塩分摂取増加、弾性ストッキング、起立訓練
- 薬物調整:降圧薬・利尿薬の見直し
- 薬物療法:フルドロコルチゾン、ミドドリン(重症例)
- 原因治療:脱水補正、出血の治療
💙 神経調節性失神
- 誘因回避:長時間立位、暑い場所、不快刺激の回避
- 水分摂取:十分な水分・塩分摂取
- 物理的対策:前駆症状時の座位・仰臥位
- 起立訓練:段階的な起立負荷
- 薬物療法:β遮断薬(重症・頻回例)
日常生活での注意点
危険回避のための対策
- 🚗 運転制限:心原性失神では運転禁止、その他も医師と相談
- 🏗️ 高所作業回避:転落リスクのある作業は避ける
- 🛁 入浴時注意:長時間の入浴、熱い湯は避ける
- 🏃♂️ 運動制限:心原性失神では運動制限が必要
前駆症状への対処
- 早期認知:めまい、冷汗、嘔気などの前駆症状を認識
- 体位変換:すぐに座る、可能なら横になる
- 下肢挙上:仰臥位で足を高く上げる
- 周囲への連絡:家族や同僚に状況を伝える
生活習慣の改善
- 💧 水分摂取:1日2L以上の水分摂取
- 🧂 塩分摂取:適度な塩分摂取(医師と相談)
- 🚶♀️ 段階的起立:急な起立を避け、ゆっくりと立ち上がる
- 👕 弾性ストッキング:起立性低血圧の予防
- 🌡️ 環境調整:高温・多湿環境を避ける
🚨 緊急受診が必要な危険サイン
- 意識が戻らない、または回復が遅い
- 胸の痛み、激しい動悸がある
- 息苦しさ、呼吸困難を伴う
- 運動中や労作中に起こった
- 外傷(頭部打撲、骨折など)を伴う

当院での診療
春日もりさん内科循環器内科クリニックでは、失神の適切な診断とリスク評価を行い、患者さんの安全を最優先に診療を提供しています。より専門的な検査や治療が必要な場合は、信頼できる専門施設と緊密に連携します:
📞 こんな症状があればすぐにご相談ください:
- 突然意識を失った(初回でも繰り返しでも)
- 運動中や労作中に気を失った
- 動悸や胸の痛みと一緒に起こった
- 前触れなく突然倒れた
- 家族に心臓病や突然死の方がいる
- 立ち上がるときに意識を失うことが続く
- 薬を飲み始めてから失神が起こるようになった
💡 患者さんへのメッセージ:
失神は多くの場合、適切な評価と治療により安全に管理できます。最も重要なのは心原性失神を見逃さないことです。どんな小さな症状でも、まずは専門医にご相談ください。当院では患者さんの安全を最優先に、丁寧な診断と治療を心がけています。
