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胃がん

🫃 胃がんの腫瘍循環器外来

胃がん治療と心臓のケア

胃がんは日本人に非常に多いがんであり、治療法の進歩により多くの患者さんが長期生存できるようになりました。特に「HER2陽性胃がん」に対するトラスツズマブ(ハーセプチン)の登場は、治療成績を劇的に向上させました。

しかし、これらの有効な薬剤は心臓に負担をかけることがあります。また、胃がん特有の問題として、胃を切除した後の「栄養障害」や「貧血」が心臓への負担を増やし、心不全のリスクを高めることも知られています。

当院では、循環器専門医がん薬物療法専門医の両方の資格を持つ院長が、消化器外科や消化器内科の主治医と連携し、薬物療法による心毒性の管理から術後の栄養サポートまで、トータルで心臓を守る診療を行います。

胃がん治療の特徴

胃がんの治療は、早期であれば内視鏡治療や手術が中心ですが、進行・再発胃がんでは薬物療法(化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)が主役となります。特に胃がんの約15〜20%を占める「HER2陽性胃がん」では、分子標的薬の使用が標準治療となっています。

胃がん治療における心毒性リスク

使用する薬剤や、胃がん特有の病態によって、以下の心血管リスクに注意が必要です。

 

薬剤・治療法

代表的な薬剤/治療

心毒性のリスク

HER2標的薬

トラスツズマブ(ハーセプチン)
トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)

心機能低下・心不全
心臓のポンプ機能が低下することがありますが、早期発見すれば回復可能です。

フルオロピリミジン系

S-1(ティーエスワン)
カペシタビン(ゼローダ)
5-FU

狭心症、心機能低下・心不全

内服薬(S-1など)でも胸痛発作が起こることがあります。

プラチナ製剤

シスプラチン
オキサリプラチン

血栓塞栓症、高血圧、腎障害による体液貯留(心不全増悪)

免疫チェックポイント阻害薬

ニボルマブ(オプジーボ)
ペムブロリズマブ(キイトルーダ)

心筋炎(稀ですが致死的になり得る副作用)、不整脈

VEGF阻害薬

ラムシルマブ(サイラムザ)

高血圧、タンパク尿、血栓症

胃切除術後・がん自体

胃全摘術後、進行がん

栄養障害・貧血による心不全、術後の心血管合併症

HER2陽性胃がんとトラスツズマブの心毒性

HER2陽性胃がんの治療に欠かせないトラスツズマブは、約2〜7%の頻度で心機能低下(心不全)を引き起こすとされています。乳がんと同様のリスクですが、胃がんの患者さんはご高齢であったり、食事摂取量が減っていたりと、体力が低下していることが多いため、より慎重な管理が必要です。

重要なポイント:
トラスツズマブによる心機能障害は「可逆性(元に戻りやすい)」が高いことが特徴です。定期的な心エコー検査(GLS解析など)で早期に異常を見つけ、休薬や心保護薬を使用することで、多くの場合は治療を再開できます。

S-1(ティーエスワン)などの5-FU系薬剤による胸痛

⚠️ 胃がん治療薬による「胸の痛み」に注意
日本で胃がん治療に広く使われる飲み薬「S-1(ティーエスワン)」や「カペシタビン」でも、心臓の血管が痙攣する「冠攣縮性狭心症」が起こることがあります。

頻度は1〜18%程度と報告されています。薬を飲んでいる期間中や、点滴治療中に「胸が締め付けられる」「冷や汗が出る」などの症状があった場合は、狭心症の可能性があります。ニトログリセリン等での治療が必要ですので、我慢せずに必ず医師に伝えてください。

免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ等)と心筋炎

進行胃がんの治療でも、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬が標準的に使われるようになりました。これにより、ごく稀(1%未満)ですが「劇症型心筋炎」という重篤な副作用が起こる可能性があります。初期症状(息切れ、動悸、だるさ)を見逃さないことが、命を守る鍵となります。

胃がん特有の問題:栄養障害・貧血と心臓

胃がんの手術(特に胃全摘)を受けると、食事量が減ったり、鉄分やビタミンB12の吸収が悪くなったりして、貧血や栄養失調になりやすくなります。

  • 貧血と心不全: 貧血になると、酸素を運ぶために心臓はより多くの血液を送り出さなければならず(高拍出性心不全)、負担がかかります。
  • ビタミンB12欠乏: 貧血だけでなく、神経障害や動脈硬化の原因にもなります。

当院では、心臓の治療だけでなく、適切な栄養指導やビタミン・鉄剤の補充を行うことで、心臓への負担を和らげるサポートも行います。

当院での腫瘍循環器診療の流れ

  1. 治療前評価

治療開始前に心機能(LVEF)や心電図をチェックします。特にHER2陽性でトラスツズマブを使用する場合や、高齢で手術を予定されている方には、入念なリスク評価を行います。

  1. 治療中のモニタリング

トラスツズマブ使用中は3ヶ月ごとの心エコー検査を行います。S-1等の内服中は、問診で胸部症状の有無を確認します。また、貧血の進行がないかも定期的に血液検査でチェックします。

  1. 腫瘍循環器リハビリテーション

術後の体力回復や、化学療法中の筋力維持のために運動療法を指導します。栄養状態を改善しながら適切な運動を行うことで、心臓の予備能力を高めます。

  1. 治療後のフォローアップ

胃がんサバイバーの方は、長期的な栄養管理が心臓の健康に直結します。ビタミンB12の定期補充や貧血管理を継続し、心不全を予防します。

心毒性が起きた時の対応

  • トラスツズマブによる心機能低下: 一時的に休薬し、心保護薬(β遮断薬、ACE阻害薬)を開始します。心機能が回復すれば、慎重にがん治療を再開します。
  • 5-FU/S-1による冠攣縮: 直ちに薬剤を中止し、ニトログリセリンやカルシウム拮抗薬で治療します。原則として同じ薬剤の再投与は避け、代替治療を検討します。
  • 術後の貧血・栄養障害: 鉄剤やビタミンB12の注射、経口栄養剤の処方を行い、心負荷を軽減します。

受診をおすすめする方

  • ✅ HER2陽性胃がんでトラスツズマブ(ハーセプチン)治療中・予定の方
  • ✅ S-1(ティーエスワン)、ゼローダ、5-FUを使用中の方
  • ✅ ニボルマブ(オプジーボ)等の免疫療法を受けている方
  • ✅ 治療中に胸の痛み、動悸、息切れを感じた方
  • ✅ 胃切除後で、貧血や体重減少、ふらつきがある方
  • ✅ 手術を控えており、心臓の評価が必要な方
  • ✅ 心臓病の持病があり、がん治療への影響が心配な方

当院の強み

院長は循環器専門医であると同時に、がん薬物療法専門医でもあります。

  • 専門的管理: HER2陽性胃がんにおけるトラスツズマブの心毒性管理に精通しています。
  • 胸痛への対応: S-1等による冠攣縮性狭心症を早期に診断し、適切に対応します。
  • 連携体制: 地域の基幹病院の消化器外科・内科と密に連携し、切れ目のない医療を提供します。

💡 患者さんへのメッセージ

胃がん治療は進歩し、HER2陽性胃がんなどでは分子標的薬が大きな希望となっています。しかし、心臓への影響や、術後の栄養状態の変化には注意が必要です。

特にトラスツズマブの心毒性や、S-1による胸痛、術後の貧血による心不全などは、適切な管理でコントロール可能です。循環器とがん治療、両方の専門知識を持つ医師として、あなたの心臓と全身の健康を守り、胃がん治療を支えます。

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