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大腸がん

🩺 大腸がんの腫瘍循環器外来

大腸がん治療と心臓のケア

大腸がん(結腸がん・直腸がん)は、日本で最も患者数が多いがんの一つです。しかし、早期発見できれば完治率は非常に高く、進行がんであっても新しい薬物療法により、長く共存できる病気となっています。

治療の進歩に伴い、使用される薬剤(特に分子標的薬)による心臓や血管への影響(心毒性)が注目されるようになりました。特に「5-FU」などの基本的な抗がん剤による胸痛(冠攣縮)や、「ベバシズマブ」などの血管新生阻害薬による高血圧・血栓症は、治療継続の妨げになるだけでなく、命に関わることもあります。

当院では、循環器専門医がん薬物療法専門医の両方の資格を持つ院長が、消化器内科や消化器外科の主治医と連携し、心臓と血管のリスクを管理しながら、安全に大腸がん治療を完遂できるようサポートします。

大腸がん治療の特徴

大腸がんの治療は、進行度(ステージ)によって手術、内視鏡治療、化学療法、放射線治療が選択されます。特に進行・再発大腸がんでは、複数の抗がん剤(5-FU、オキサリプラチン、イリノテカンなど)と分子標的薬(ベバシズマブ、セツキシマブなど)を組み合わせた強力な治療が行われます。これらの薬剤には、それぞれ特有の心血管リスクがあります。

大腸がん治療における心毒性リスク

治療内容によって、注意すべき心臓・血管への影響は異なります。

薬剤・治療法

代表的な薬剤/治療

心毒性のリスク

血管新生阻害薬 (VEGF阻害薬)

ベバシズマブ(アバスチン)
ラムシルマブ(サイラムザ)

高血圧、タンパク尿、血栓塞栓症、心不全、稀に動脈解離

フルオロピリミジン系

フルオロウラシル(5-FU)
カペシタビン(ゼローダ)
S-1(ティーエスワン)

冠攣縮性狭心症(心臓の血管の痙攣)、心筋虚血、不整脈
投与中や投与直後に胸痛が起こることがあります。

プラチナ製剤

オキサリプラチン(エルプラット)

QT延長、不整脈、末梢神経障害

大腸がん自体

進行がん、転移がん

静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症)のリスクが非常に高い

フルオロピリミジン系薬剤(5-FU)による冠攣縮

⚠️ 治療中の「胸の痛み」は我慢しないでください

5-FUやカペシタビンなどの薬剤は、心臓の血管(冠動脈)を痙攣(スパズム)させ、一時的に血流を悪くすることがあります。これを「冠攣縮性狭心症」と呼びます。

発生頻度は1〜18%程度と報告されており、決して稀ではありません。特に、元々心臓病がある方や狭心症の既往がある方でリスクが高くなります。

症状: 胸の圧迫感、締め付けられるような痛み、冷や汗、動悸。
これらの症状が出た場合は、直ちに医師に伝える必要があります。当院ではニトログリセリンやカルシウム拮抗薬を使用し、発作を予防・治療します。

VEGF阻害薬(ベバシズマブ)の心血管リスク

大腸がん治療のキードラッグであるベバシズマブ(アバスチン)などは、血管の新生を抑える作用がありますが、副作用として全身の血管にも影響を及ぼします。

  • 高血圧: 20〜30%の患者さんに高血圧が現れます。血圧が高い状態が続くと、脳出血や心不全のリスクが高まるだけでなく、がん治療の中断につながることもあります。家庭血圧の測定と、早期からの適切な降圧治療が重要です。
  • 血栓症: 動脈や静脈に血栓ができやすくなります。心筋梗塞や脳梗塞、肺塞栓症などの重篤な合併症に注意が必要です。
  • タンパク尿・心不全: 腎臓への負担や、心臓のポンプ機能低下が起こることがあります。

大腸がんと血栓塞栓症

大腸がんは、消化器がんの中でも特に血栓(血の塊)ができやすいがんの一つです。がん細胞が血液を固まりやすくする物質を出すためです。さらに手術や化学療法によってリスクは増大します。

足の静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」や、それが肺に飛ぶ「肺塞栓症(エコノミークラス症候群)」は命に関わります。一方で、消化管腫瘍は出血もしやすいため、血をサラサラにする薬(抗凝固薬)の使用には高度な判断が必要です。当院では出血リスクと血栓リスクのバランスを見極め、適切な管理を行います。

手術周術期の心血管管理

大腸がんの手術を受ける前には、心臓が手術に耐えられるかどうかを評価することが重要です。特に高齢の方や、高血圧・糖尿病などの持病がある方は、術中に心筋梗塞や不整脈を起こすリスクがあります。

当院では、手術前の心機能評価(心エコー、心電図など)を行い、必要であれば事前の治療や薬の調整を行うことで、安全に手術が受けられるよう外科医をサポートします。

当院での腫瘍循環器診療の流れ

  1. 治療前評価

化学療法や手術の前に、心電図、心エコー、血液検査を行い、心臓の「基礎体力」とリスクを評価します。特に虚血性心疾患(狭心症など)の既往がないかを入念にチェックします。

  1. 治療中のモニタリング

ベバシズマブ使用中は家庭血圧の記録をお願いし、血圧管理を徹底します。5-FU使用中は胸部症状の有無を確認し、症状があればホルター心電図などで虚血の有無を調べます。

  1. 腫瘍循環器リハビリテーション

術後の体力低下や、化学療法による疲労感を改善するために、運動療法を行います。CPX(心肺運動負荷試験)に基づいた適切な運動は、再発予防や生活の質の向上に役立ちます。

  1. 治療後のフォローアップ

治療終了後も、抗がん剤による長期的な心血管への影響や、生活習慣病の管理を継続し、健康寿命の延伸を目指します。

心毒性が起きた時の対応

  • 5-FUによる胸痛(冠攣縮): 原則として薬剤を中止し、ニトログリセリンやカルシウム拮抗薬で治療します。再投与は慎重に検討し、場合によっては他の薬剤への変更を提案します。
  • 高血圧: がん治療を継続しながら、降圧薬(カルシウム拮抗薬やARBなど)を使用して血圧をコントロールします。
  • 血栓症: 消化管出血のリスクを評価しながら、適切な抗凝固療法を開始します。

受診をおすすめする方

  • ✅ ベバシズマブ(アバスチン)などを使用中の方
  • ✅ 5-FU、ゼローダ(カペシタビン)、S-1を使用中の方
  • ✅ セツキシマブ等のEGFR阻害薬を使用中の方
  • ✅ 治療中に胸の痛み、圧迫感、冷や汗を感じた方
  • ✅ 高血圧が悪化した、または新たに発症した方
  • ✅ 足のむくみ、急な息切れがある方
  • ✅ 大腸がんの手術を控えており、心臓の評価が必要な方
  • ✅ 心臓病(狭心症、心筋梗塞、心不全など)の持病がある方

当院の強み

院長は循環器とがん薬物療法のダブルライセンスを持つ専門医です。

  • 5-FU冠攣縮の管理: 循環器内科医としての専門知識を活かし、狭心症発作の鑑別と治療を迅速に行います。
  • 厳格な血圧管理: VEGF阻害薬の効果を維持しつつ、脳心血管合併症を防ぐためのきめ細やかな血圧調整を行います。
  • 周術期管理: 外科医と連携し、心臓病を持つ患者さんが安全に手術を受けられるようサポートします。
  • 出血と血栓のバランス管理: 消化器がん特有の出血リスクを考慮した、安全な抗凝固療法を提供します。

💡 患者さんへのメッセージ

大腸がんは、適切な治療を行えば予後の良いがんの一つです。しかし、治療を完遂するためには、心臓や血管のトラブル(高血圧、血栓、狭心症など)を未然に防ぐことが重要です。

特に「治療中の胸の痛み」は心臓からのSOSかもしれません。決して我慢せず、すぐにご相談ください。循環器とがん治療の両方の専門家として、あなたの心臓を守り、安心して大腸がん治療に取り組める環境を提供します。

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