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乳がん

🎀 乳がんの腫瘍循環器外来

乳がん治療と心臓のケア

乳がんは日本人女性に最も多いがんであり、9人に1人が罹患すると言われています。しかし、近年の治療法の目覚ましい進歩により、早期発見・早期治療を行えば、多くの方が「治癒」を目指し、元気に社会復帰できる病気となりました。

一方で、乳がん治療に使われる一部の抗がん剤(特にHER2陽性乳がん治療薬)や放射線治療は、心臓に負担をかける可能性があります。 当院では、循環器専門医がん薬物療法専門医の両方の資格を持つ院長が、乳がん治療前から治療中、そして治療後の長期フォローアップまで、あなたの心臓を守りながら、安全にがん治療を完遂できるようサポートします。

乳がん治療の特徴

乳がんは性質(サブタイプ)によって治療法が異なります。約15〜20%を占める「HER2陽性乳がん」では、分子標的薬(トラスツズマブなど)が劇的な効果を上げています。また、ホルモン受容体陽性乳がんではホルモン療法、トリプルネガティブ乳がんでは化学療法が中心となります。これらの治療法それぞれに、注意すべき心血管リスクがあります。

乳がん治療における心毒性リスク

治療内容によって心臓への影響は異なります。主なリスクは以下の通りです。

薬剤・治療法

代表的な薬剤/治療

心毒性のリスク

アントラサイクリン系

ドキソルビシン(アドリアマイシン)
エピルビシン

用量依存性の心機能低下・心不全
投与量が増えるほどリスクが上がります。心筋障害は早期に治療開始することで改善する場合があります。

HER2標的薬

トラスツズマブ(ハーセプチン)
ペルツズマブ

心機能低下・心不全
心不全治療を行うことで改善する可能性があります。

CDK4/6阻害薬

パルボシクリブ
アベマシクリブ

QT延長(不整脈の一種)

放射線治療

左側乳房への照射

冠動脈疾患、弁膜症(10〜20年後の晩期合併症として)

トラスツズマブ(ハーセプチン)の心毒性について

HER2陽性乳がんの予後を劇的に改善した「トラスツズマブ」は、約2〜7%の患者さんに心機能低下(心不全)を引き起こすとされています。特にアントラサイクリン系薬剤を使用した後にトラスツズマブを使用する場合、心不全のリスクは最大27%まで上昇するという報告もあります。

しかし、過度に恐れる必要はありません。
トラスツズマブによる心機能障害は「可逆性(元に戻りやすい)」が高いことが最大の特徴です。心臓の機能を定期的にチェックし、わずかな低下を早期に発見して適切な対応(一時休薬や心保護薬の開始)を行えば、多くの場合心機能は回復し、がん治療を再開・完遂することができます。

ホルモン療法と心血管リスク

長期間にわたって行われるホルモン療法も、心臓や血管に影響を与えることがあります。

  • タモキシフェン:血栓ができやすくなり、深部静脈血栓症や肺塞栓症のリスクがわずかに上昇します。
  • アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール等):コレステロール値が上昇しやすく、動脈硬化が進むリスクがあります。また、骨粗鬆症にも注意が必要です。

左側乳房への放射線治療と心臓

左側の乳がんで放射線治療を行う場合、心臓が照射野に含まれる可能性があります。過去の放射線治療では、10〜20年後に狭心症や心筋梗塞のリスクが高まることがありましたが、現代の治療技術(深吸気息止め照射やIMRTなど)では、心臓への線量は大幅に低減されており、リスクはかなり低くなっています。それでも、長期的な視点での定期検診は重要です。

当院での腫瘍循環器診療の流れ

  1. 治療前評価

がん治療開始前に、心臓の「基礎体力」を確認します。

  • 心エコー図検査:心臓のポンプ機能(左室駆出率:LVEF)を正確に測定します。
  • リスク評価:高血圧や糖尿病などのリスク因子を評価し、必要なら治療を開始します。
  1. 治療中のモニタリング

治療中は定期的に心臓をチェックし、異常の早期発見に努めます。

  • 定期的な心エコー:トラスツズマブ治療中は3ヶ月ごとに心エコーを行います。
  • GLS解析:LVEFが低下する前の、ごく微細な心機能の異常を早期に検出します。
  1. 腫瘍循環器リハビリテーション

治療中・治療後の体力低下を防ぎ、回復を早めるために、運動療法を行います。CPX(心肺運動負荷試験)で安全な運動強度を決定し、無理なく続けられる運動メニューを提案します。適度な運動は、乳がんの再発予防にも効果的であることが分かっています。

  1. 治療後のフォローアップ

治療終了後も、心臓の健康を守り続けます。特に左側乳房照射を受けた方やホルモン療法中の方は、長期的なリスク管理(血圧、脂質、動脈硬化のチェック)を行います。

心毒性が起きた時の対応

万が一、心機能の低下が見られた場合でも、循環器専門医が迅速に対応します。

  • 心保護薬の開始:ACE阻害薬やβ遮断薬を使用し、心臓を保護します。
  • 治療計画の調整:乳腺外科や腫瘍内科の主治医と連携し、一時的な休薬や薬剤の変更、治療再開のタイミングを慎重に判断します。
  • 血栓症治療:血栓が見つかった場合は、抗凝固療法を行います。

受診をおすすめする方

  • ✅ HER2陽性乳がんで、トラスツズマブ(ハーセプチン)治療を予定・実施中の方
  • ✅ アントラサイクリン系抗がん剤(アドリアマイシン等)を使用予定・使用中の方
  • ✅ 左側乳房への放射線治療を受けた、または受ける予定の方
  • ✅ 治療中に息切れ、動悸、足のむくみを感じた方
  • ✅ ホルモン療法中で、血栓症やコレステロール値が心配な方
  • ✅ 乳がん治療後のサバイバーの方(将来の心臓病リスクが心配な方)
  • ✅ 高血圧や糖尿病などの持病があり、がん治療への影響が心配な方

当院の強み

当院の院長は、「循環器専門医」「がん薬物療法専門医」の両方の資格を持っています。

  • 専門的知識:乳がん治療薬(特にトラスツズマブやアントラサイクリン)の心毒性管理に精通しています。
  • 診療連携:地域の基幹病院の乳腺外科や腫瘍内科と密に連携し、がん治療を止めないためのサポートを行います。
  • 女性に優しい診療:女性特有の悩みやライフステージに配慮した、丁寧な診療を心がけています。
  • リハビリテーション:がん治療中の体力維持から治療後の社会復帰まで、リハビリを通じてサポートします。

💡 患者さんへのメッセージ

乳がんは早期発見・早期治療により、多くの方が治癒を目指せる時代です。特にHER2陽性乳がんでは、トラスツズマブという素晴らしい薬がありますが、心臓への影響に注意が必要です。

しかし、適切なモニタリングと心保護治療により、ほとんどの方が安全に治療を完遂できます。当院では、循環器専門医・がん薬物療法専門医として、あなたの心臓を守りながら、乳がん治療を全力でサポートします。治療中も治療後も、安心して過ごせるよう、寄り添い続けます。

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